これは 東京大学きらら同好会 Advent Calendar 2022 の14日目の記事です。1日遅れてごめんなさい......
きららじゃないものって、あんまりない!!(詠唱)
現状
なにがどうなってこうなったのかとか、あんまり覚えていないんですよね。インターネットで英語圏のものに触れるようになったのは中2あたりで、最初は英語圏の活発なエスコンファンコミュニティを追ったり最大のエスコン Wiki であるところの Acepedia を読んだりするのが目的でした。それ以降の経緯は......覚えていません......。
溶かしてきた時間の長さは、Twitter を超えてはいないはずですが、おそらく Twitter と同等のオーダーにはあると思われます。そこで問題が生じます。Twitter は発信も伴うからふぁぼりつに換金できるが、YouTube の視聴にはなんらリターンがない...... 仕方ないので、今から意地でも英語圏 YouTube だけで1万字書きますから、みなさんは最後まで読んでくださいね。十分な数の人間にこのナンセンス記事を読ませて人生を少しずつ奪うことでバランスを取ります
私の好きなチャンネルは大きく3つに大別されます:時事・ドキュメンタリー系、エデュテインメント系、趣味。1つめと3つめはいいとして、2つめが初耳だという場合のために説明すると、初耳でも簡単にわかると思いますが education と entertainment のかばん語です。ナショナルジオグラフィックに由来の一つを持つ単語だといえばどういうものを指しているのかおわかりでしょうが、科学ドキュメンタリーの形態に限らず、すイエんサー的なものからもっとかっちりした解説動画(英語圏では explainer と言います)まで指しえます。では科学ドキュメンタリーや explainer と1つめのドキュメンタリーとの違いはなんなのかと言いますと、同じものを扱っていても、動画の目的が事実の教育・解説よりはストーリーや歴史を伝えることにあると思われる場合に1つめに分類したくなりますね。ということで本題です。
時事・ドキュメンタリー系
・Vox
このカテゴリーの一番手に何を持ってくるべきかは常に悩みどころです。しかし、結局Vox を語らずしてこのカテゴリーを語ることはどうしてもできず、歯ぎしりしながらもここへ戻ってきてしまうというわけです。
Vox は自称ニュースメディアですが、かなり明確に左寄りであり、あんまりニュースメディアとして信頼するにはふさわしくありません。しかし困ったことに、それ以外の要素のほとんど全てが超偉大であるゆえに無視できないんですよね。
Vox の偉大さの半分は Vox というスタジオ全体で共有されている編集スタイルにあります。動画の冒頭からリズムよく短いカットをつなげることでアテンションを引き留めたり、一方で感情に訴えるべき場所では非常に効果的に沈黙を利用したり、といった基本的なことがしっかりしているのはもちろんのこと。その上で、Vox 特有と言っていいものとしてはピューンと伸びる直線のアニメーションやコラージュ風の図表などがあり、これら全てが間違いなく Vox 以降に出てきたチャンネルに多大な影響を与えています。ここではまだピンとこないかも知れませんが、私がこれから貼っていく様々なチャンネルの動画を見ていけば多分意味がわかると思います。
Vox の偉大さの残り半分は、Johnny Harris という人物です。彼は最近独立して残念ながらちょっと中田敦彦みたいになってしまった(失礼(どっちに?笑))のですが、Vox にいた間に彼がした仕事の残した影響は計り知れません。どういう仕事をしていたのかは、彼が最もよく知られている作品群であるところの Vox Borders を見ていただければわかるでしょう。簡単に言うと、地図モノ最古参の一人です。彼がいなくなった今も Vox では Vox Atlas というかなり長寿のシリーズが続いていて、優秀な地図モノを出し続けていますね。
Vox の動画の中から2本、個人的なピックアップを貼ります。
1本目はチャイナタウンの建築様式について説明したもの。Vox は科学や芸術を社会と絡めて語ったときに一番輝くと思っているので、この動画はかなり好きです。編集スタイルも比較的 Vox に典型的なそれです。
The surprising reason behind Chinatown's aesthetic - YouTube
2本目は Johnny Harris が Vox Broders に関わる前に作り始め、途中で放置した Settlements というシリーズ。イスラエルによるヨルダン川西岸地区への入植の状況をパート1では地図を中心に、パート2では実際に現地に行って入植者の住人と話しながら伝えています。パート3ではパート2で触れた住人たちよりももっとずっと中心でイデオロギーを牽引している人たちに会いに行くと言っていましたが、結局パート3は出ていません。悲しい。
Israeli settlements, explained | Settlements Part I - YouTube
・Wendover Productions
面倒なものは早めに片付けておくに限る。Wendover Production は......私が好きなチャンネルの好きな部分と避けるチャンネルの避けたい部分を組み合わせた、私への個人攻撃のようなチャンネルと言えます。まぁ避けたい部分のほうが多いんですが。避けたい部分はスクリプトと編集の質を犠牲にした数打つ戦法で、ブランディングとしてもチープだなと思うし、実際に情報の正確性が大きく犠牲になっているケースも目にしたので、あんまり好きにはなれないわけです。でも時々扱っているテーマが私の興味にハマるとそれなりに印象を残してくれるんですよね。例えばニューヨークの上水システムを扱ったこれ。
The Simple Genius of NYC’s Water Supply System - YouTube
こういうテーマの選び方は好きなんですよ。ただそこを除けば、あろうことかこいつがこのリストの2番目(!)に座っているのは、純粋にチャンネル規模によるものです。
ところで、本チャンネルからスピンオフした Podcast である Extremities が1年前に専用の YouTube チャンネルを持ちまして、7本出しただけで沈黙しちゃったのは残念なんですが、こっちはブランディングよさそうだしおもしろそうなんですよね。まだ見てないんですけど。あと何度も言うんですがこういうトピック選びのセンスは好き(これは世界中の辺境集落の話だけでシリーズを作っている)。
・B1M
昔は「世界の凄い建設プロジェクトTOP5!」みたいなのをやってたが、少しずつ質が向上していき、いい調子だねぇと思っていたらある日いきなり30分近い社会派ドキュメンタリーを投下してファンを呆然とさせたチャンネル。今ではこのリストの3番目に置いちゃうくらい好きになりました。ちょろい。
こちらがそのファンを呆然とさせた動画です。
Why New York’s Billionaires’ Row Is Half Empty - YouTube
以降は少なくとも10本に1本が30分級という感じで、例えばつい3時間前に投下されたこれ:
The Relentless Evolution of the New York Skyscraper - YouTube
が私は今見たくて見たくてたまらないのですが、賢いので見ずにこの記事を書いています。賢すぎ。もうちょっと賢かったら遅刻しなかったのにねぇ。
社会派ドキュメンタリーをやってもあんまり明確な政治的メッセージを作らずに終わらせることが多いのが、人によっては好きだろうし人によっては嫌いだろうなと思います。個人的にはチャンネルのルーツとそれによる視聴者層を考えれば妥当だろうなと思っていますね。建設と社会の接点の話、建築設計の方面の人間しかやりたがらない印象があって、B1M のようにどちらかというと土木建設に近い方面から社会派をやるのはそれだけで希少価値があると思っています。
・Mustard
試作機とか原子力船とか新幹線とか、そういう乗り物ロマン方面なんですが、編集のクオリティ高すぎてびっくりしますね。この人に語らせると全部かっこいい。毎回3Dモデルを自作しているのも本当にすごいです。唯一大変残念なのは、Nebula というサブスク動画配信サービスにやや重点を置いて活動していて、そこのサブスク料を払わないと結構な数の傑作回を見れないことなんですよね。まぁ私は当然払っているのですが、2年前の F-117 の回は本当に良かった。今は B-2 回を鋭意制作中とのことで私は首を長くして待っております。
Nebula のダイマをやめて YouTube に存在する動画で行くと、日本人にはやっぱり0系新幹線の回が刺さるんじゃないでしょうか。
Why This Train Is The Envy Of The World: The Shinkansen Story - YouTube
あとは原子力船の回がなぜか強く印象に残っていますね。
What Happened To The Nuclear Passenger Ship? - YouTube
・neo
初めは「また地図モノ explainer かぁ」とあまり個性を感じていなかったチャンネルなのですが、2本の動画が決め手になって大きく見直しました。
英語圏の超大物科学系 YouTuber(※大物すぎて逆張りオタクの私が見たがらなくなるくらいの大物、当然この記事には登場しない)として知られる2人の人物が去年の秋に #TeamSeas という海洋ごみの除去を目的とした大規模なファンドレイジングをやったんですね。そのときに英語圏 YouTube では一斉に #TeamSeas とのコラボ動画が投稿されたんですが、大体まぁコラボするだけするよという感じで、YouTube Shorts だけで済ます例もあったくらいです。
ところが、neo はなんかこれに本気を出して、「実は人類の海底地図はスカスカである」という話を15分かけてやる動画を作っちゃったというわけです。そして恥ずかしながら私がそれを知ったのは今年に入ってからだったという......。ともかく、こちらがその動画です。
Why Maps of Our Oceans Are Bad - YouTube
もう1つは 9.11 に合わせてアップロードされたワールドトレードセンター跡地再開発に関する動画で、30分ほどあります。しかも Nebula には15分かけてオリジナルのワールドトレードセンタービルがどのように作られたかを説明する動画も同時に上げられています。CG を贅沢に使って計画案などを立体化しているのが印象的。
How the World Trade Center Was Rebuilt - YouTube
・Calum
比較的最近見つけたチャンネル。オタク・ホイホイ・トピックを選ぶのが実に上手。
Fort Drum: America's Unsinkable 'Concrete Battleship' - YouTube
この動画を見て一発で好きになりました。フィリピンの浅瀬に作られた戦艦の形の要塞の話です。
Vox がやってそうなポップカルチャーに近い話をするときには編集スタイルも Vox に似てくることがあって、例えばこれは長さも10分台でお手軽。
Helihome: The Insane 1970's Flying Camper - YouTube
いやこれ本当に Vox にしか見えなくて面白いですね。特にイントロ。
基本的には30分を超えるような大作が多く、そのくせ本当に見入ってしまうので、実に効率的に人生を溶かしてくれます。こういう良いチャンネルに出会うと見ている間は人生のことを忘れられるので好きです
・Peter Dibble
比較的最近見つけたチャンネル2。Calum に似ていて、オタク・ホイホイ・トピックについて1時間近くのドキュメンタリーを連発するので本当に人生に悪いです。Calum と違うのは動画がさらに長いのと、どうやら鉄オタっぽいところですね。
個人的に興味深かったのはこの動画です。
The Rise & Fall (& Rise) of Auto-Train - YouTube
北米が自家用車交通に依存しすぎていて鉄道網が貧弱というのはよく知られた話ですが、その中で鉄道を売る方法として自家用車の顧客を車ごと列車に乗せて車内サービスの体験で売るというアイデアを追求した会社の話です。アイデア自体が驚きだっただけではなく、よく考えると現代日本のフェリーの商売と非常に似ているところを感じて妙にリアルなのがいい。
・Kraut
そろそろこの辺りで紹介すべきでしょう。ポーランドボールを使ったアートスタイルに騙されることなかれ、動画の中身はかなり真剣です。初期の動画数本と直近の短い動画数本しか見ていないのでまだあまりどういう思想の人間なのかわかっていないのですが、政治経済史を中心として歴史にものすごい詳しいだろうことは確かです。主張したいことのためにやや無理をする傾向はあるんですが、党派性は見いだせないので多分アジェンダが強いということではなく、どちらかというと彼自身の歴史への興味が様々なマクロヒストリーの理論への興味に駆動されていることの結果なのかなぁと思っています。
いや、たしかオーストリア辺りの人間だったと思うので、私がオーストリアの政治的文脈を知れば党派性を読み取れるようになるのかも知れませんが。まぁそうだとしても、 Anglosphere の左右対立に回収されない政治的スタンスの人間は貴重です。私としても英語圏のコンテンツを全部英米政治の文脈で読もうとする癖はよくないとは思っているのですが......。
政治経済史の解釈をさせると大変流暢であるというのはこの動画がよく示していると思います。
Why Saudi Arabia is doomed - YouTube
雑な歴史観を論破するタイプの動画を出しており、この人の歴史への興味がどういう方面から来ているのかがうっすら分かります。該当するのは最初期のこちらと
History does NOT Repeat - YouTube
直近に続けて投稿されたこちらの2本
The Myth of Racial Political Development - YouTube
The Limits of Geographic Determinism - YouTube
ですかね。他には数時間かけて特定地域の歴史を解説し続ける動画とかも出しているのですが、さすがに重すぎて見れていません......。
・欧州新参連合(と私が呼んでいるもの)
・Hoog
・Spectacles
・The Present Past
・Faultline
・IMPERIAL
・Into Europe
・Kamome
しばしばお互いに宣伝しあっているので多分つるんでるんだと思う。しらんけど。オランダとかスイスとかイタリアとかのチャンネルたちで、多くが大陸ヨーロッパの社会的文脈を英米中心的な英語圏に持ち込もうという野望を持って活動しています。多分。規模の小さいチャンネルがそれぞれの作風を維持しながらゆるく手をつなぎ合ってるのってものすごくヨーロッパ的ですよね。北米だと見られないやり方だと思う。
Hoog が圧倒的な最大手で、入り口としてはかなりいいと思います。アートスタイルも非常に印象に残りますね。個人的には The Present Past がかなり "キテる" と思っています。
・Ryan Chapman
このカテゴリーの最後はやはりこのチャンネルに任せたい。北米の文脈に戻ってきちゃうんですが、都市と地方で全く違う国なのではないかというレベルの分断に面している合衆国において、右の人間でも左の人間でも地雷を踏まずに安心して見れる政治的コンテンツを作っている絶滅危惧種です。学芸的にレベルの高い議論は出てきませんが、今の時代では中立性や冷静さを堂々と追求する人間はほとんどいなくなってしまったゆえ、私はかなり本気で応援しています。このようなコンテンツの存在が分断を超えた対話において共通基盤となってくれることを祈るばかりです。
Ryan の思想が一番良くわかるのはこの動画でしょう。
Why News Used To Have Less Bias - YouTube
中立性は虚構なので盲目的に信じることは間違っていますが、しかし秩序的な対話に必要な建前でもあります。全く顧みなくてよいものとして捨て去ってしまうと、言論空間は暴力的な実力至上主義に後退してしまうでしょう。(これは私の思想)
科学・エデュテインメント系
・Tom Scott
10年以上前、まだ YouTuber という概念がなかった頃、YouTube クリエイターという人種は多くが他分野(コメディーやテレビなど)で先にキャリアを積んだ上で YouTube に進出してきていました。その世代の最大手といえば Tom Scott でしょう。言語学の学位で大学を卒業したあとテレビタレントとしての道をしばらく歩み、初期の YouTube 活動では主に言語学やコンピューターサイエンスに関する動画を作っていました。
インターネットが私たちの知る苛烈なインターネットになっていく中で、古典ともいえる偉大なコンテンツを残しながらもメタゲームに乗れずに没落していった古参は少なくありません。その観点から考えると、Tom Scott の特徴はその守備範囲の広さ、作風の柔軟さにあると言っていいでしょう。的確に戦略を変えながら多くのプロジェクトを同時進行させることで高いレジリエンスを維持し、私の登録チャンネルフィードの中でも特に量と質が共に高い水準で安定している人物と言えます。
長い動画が好きな人間としては、Tom Scott はおもしろい話をたくさんするのにどれひとつ満足できるところまで掘り下げてくれないというちょっとくすぐったい感じの人なのですが、彼にとって特段に大切なトピックに関してはメタゲームを放棄して長い動画を出してくれたことがあります。2本だけ。
YouTube's Copyright System Isn't Broken. The World's Is. - YouTube
YouTubers have to declare ads. Why doesn't anyone else? - YouTube
これだけの熱意をもっと他のトピックにも注いでくれたら......多分それをやると偉大な古参勢たちと共に墓場へ直行なんでしょうね............。1つ目のカテゴリーで紹介した長編動画ばかり作っているクリエイターたちは Patreon での寄付をベースに活動していることが多く、でもああいう推し貢ぎシステムって上の世代の人は嫌いそうですよね。私もあまり好きじゃないですが、他にどうしようもないと思って受け入れている人がほとんどじゃないかなぁ。
Tom Scott が主催した/しているエンタメシリーズは多分星の数ほどある(過言)し私はよく知らないのでなにかをここに貼るということはしませんが、めちゃくちゃおすすめなこととしては、彼のニュースレターに登録するといいです。毎週月曜日(日本では火曜日未明とかになりますが)に Tom Scott のその週のコンテンツ更新と、彼がその週の間に YouTube や YouTube 以外の一般インターネットで見つけたおもしろコンテンツを紹介してくれます。嬉しい。
・Vsauce
この記事の中で一番チャンネル登録数の多いチャンネルです。ホストの Michael Stevens はインターネット内に留まらない科学教育の有名人であり、動画はシンプルな疑問を入り口に物理学や数学や心理学などについての長い長い好奇心の旅に連れて行ってくれるという独特の構成を持っています。個人的にはそのスタイルのせいで動画の焦点がとっ散らかってる印象を抱きがちなのですが、質が低いわけではないしかなりの有名人なので、無視するわけにはいかないなと思ってリストに含めた次第です。
・Veritasium
さぁ本格的に英語圏科学教育界隈に入っていきましょう。無視できない大物が多すぎるのでやや私の語りが短くなっていきますが、個人的感情がなくともリストに入れざるを得ないという意味で受け取っていただければと思います。
Veritasium のホスト Derek Muller はオーストラリア出身で、応用物理学で学士を取ったあと映像制作を勉強しながら物理教育の研究をして博士課程まで修了。今までに複数のテレビドキュメンタリーも手掛けてきています。動画は(約1年前のやや胡乱だった時期の数本を除けば)大体どれから見ても十分面白いと思うのですが、個人的なお気に入りを2本貼っておきます。
1本目は Michael Stevens とのコラボ。情報とエントロピーの話です。
2本目はテニスラケットの定理の動画。Q. お前がテニスラケットの定理が好きってだけでは? A. はい......
The Bizarre Behavior of Rotating Bodies - YouTube
・StandUpMaths
有名人だってことしか知らない(最悪)。ホストの Matt Parker があちこちに出てくるので知っているんですが、チャンネルの動画はあんまり見たことないんですよね。でも見たことある動画は全部それなりに面白かったので、面白いんだと思います。
私は 3Blue1Brown のホスト Grant Sanderson が好きなので、彼とのコラボ動画を貼ります(最悪2)。有名なパズルなので知ってる人も多そう。
The almost impossible chessboard puzzle - YouTube
Which leads us to...
・3Blue1Brown
私の TL の中だと飛び抜けて知名度が高いイメージがあります。レベルが高すぎるアニメーションは Python で書かれた自作エンジン Manim で作られており、一般向けバージョンがコミュニティによって維持・公開されています:
GitHub - 3b1b/manim: Animation engine for explanatory math videos
面白い動画は本当にいくらでもあるのですが、個人的なお気に入りをまた貼ると、問題へのアプローチにフォーカスしたこちらと、
Alice, Bob, and the average area of a cube's shadow - YouTube
この動画(およびこれに続く2本の解説編)ですね。
The most unexpected answer to a counting puzzle - YouTube
ちなみに東大有志による公認日本語訳チャンネルが存在します。
・Steve Mould
Derek が胡乱な動画を作ったときに落ち着いた補足動画を上げてくれるタイプのチャンネル(雑な紹介)。例えばこの回:
Sailing Faster Than The Wind - How Is That Even Possible? - YouTube
実物を作って実験するのが好きそうだというイメージがあります。これとかいいかも。
Penrose Unilluminable Room Is Impossible To Light - YouTube
Matt Parker とつるんでることが多いですね。
・CGP Grey
基本的な部分をカバーしたところで、私が個人的な感情を持っているチャンネルを紹介していきます。まずは CGP Grey。ニューヨーク出身のロンドン在住、大学では物理学と社会学のダブル学位を取り、最近まで物理学教師をしていました。ユーモアと正確性への異常な執着と細かいディテールを世界の果てまで追いかける知的体力を兼ね備えたロボット、という感じの人物像が私の中にできているのですが、大方私が勝手にクソデカ感情を持ってるだけでしょうね。
作風への入り口としてはこれがおすすめ:
Hexagons are the Bestagons - YouTube
声がすごく落ち着きませんか?好きなんですよね声......。
細かいディテールを世界の果てまで追いかける知的体力がよく分かる動画としてはこれがあります:
Someone Dead Ruined My Life… Again. - YouTube
正確性への異様な執着がよく分かる動画としてはこれですね:
ところで、Numberphile という数学に関する一般向け動画を大量に作り続けているチャンネルがあるんですが、それを立ち上げた Brady Haran と CGP Grey が雑談する podcast がありまして、しばしば作業用BGMにしています。人物像のうちロボットの部分はこの podcast のとあるエピソードに由来しています。
・jan Misali
このリストの中でもかなり若い、はずです。とんでもない早口オタクで、いまだに字幕を切ると動画についていけなくなります。でもそこが大好き。
かつては人工言語紹介シリーズをかなり長くやっていましたが、人工言語の話ばかりするのは疲れたらしく、最近は彼のオタク趣味が全開のチャンネルになっています。一般向けなのはこの Caramelldansen に関する動画ですかね。
who wrote Caramelldansen? - YouTube
個人的に好きだったのは、いわゆる「パラドックス」を分類するこの動画。
the five kinds of paradox - YouTube
オタクなので浮動小数点数の話とか単位系の話とかもしているんですが、特にここに貼りたいのは6進法が一番いい位取り記数法だと主張するこの動画。
a better way to count - YouTube
彼は任天堂のオタクでもあるのですが、私は任天堂のオタクではないので、任天堂の話をされるとついていけなくて悲しくなります。のですが、この動画はいくら任天堂のオタクでもついていける人は多くなさそう。本当に狂ってると思う。
how many Super Mario games are there? - YouTube
・Jay Foreman
イギリス人って本当に面白いですよね。このカテゴリーにはなぜかイギリスのクリエイターが多いのですが、Jay Foreman もそう。YouTube やる前はコメディアンだったはずです。今は主に地図と鉄道のオタクとして動画を作っています。
更新頻度は低いのですが、12年前から続いている Unfinished London のシリーズが本当にバカ面白く、いいから見てくれという感じ。いいから見てくれ。
ちなみに、Unfinished London のタイトルアニメーションを作ったのは Tom Scott なんですよね。なんだかんだ小さな世界なんだろうなぁ。
・exurb1a
エデュテインメント系とは言えない気がします......がどこに置くべきなのかもわからないので、ここに。視聴者に depressing turtle とあだ名されていて、しばしば existential crisis を扱っているとされる/自分でもそれをネタにしている感じのチャンネルです。普通に文学のセンスがあり、SF を書いているらしい。読んだことはありません。
私としては、exurb1a を他の existential 系コンテンツと分ける本質は「感情ジェットコースターによって演出されるニヒリスティックな視聴後感」にあると思っており、繰り返しそれを主張していく考えです。
かなり気に入っているのはこの動画。比較的エデュテインメントっぽいやつです。
so you want to build a nuke - YouTube
短編小説みたいなのを動画の形で上げることもあり、その方向性で行くとこの動画がかなり好きです。感情ジェットコースターで振り回してくる作風が物語の演出としてかなりよく活きています。
Upsilon Dies Backwards - YouTube
・Junferno
アジア人ですよ!たぶん中国かなぁ、Twitter で流暢な中国語を使っていたので。
かつてはこんな感じ( Bad Apple!! played on Google Maps - YouTube )の「任意のアプリで Bad Apple!! を再生する」類型の動画でバズっていたのですが、最近になってボーカロイドとか VTuber とか機械学習とかそういうトピックの技術的背景を紹介する動画を作り始めました。英語が大変流暢でユーモアが面白く、英語圏 YouTube に時間を溶かしてきたアジア人としては、同じアジア人が良質なコンテンツを出してくれているのを見て勝手に嬉しくなっています。
1本選ぶならやっぱりこれかなぁ。
The "VTuber" and its (Technical) Future - YouTube
ちなみに、最近見つけたもう1つのアジア人のチャンネルとして、aini があります。ジャンル的には1つ目のカテゴリーに置くべきなのかもしれませんが、編集スタイルとしてはカメラの前で喋ってるだけなので、アジア人としてのシンパシーの話をしたところからの honorable mention ということで。
もともとはインスタで中国の社会やフェミニズムの話をしてたらしいのですが、まぁ当然そういう話はインスタでやるにはあまり向いてないわけで。どこからともなく YouTube に現れるなりハイレベルな社会批評をやったところ1本目の動画から数十万再生されており、英語圏 YouTube 評論空間へようこそ!という気持ちになりますね。
・Practical Engineering
土木・インフラ系なのですが、扱うトピックの地味さとは裏腹に、かなり興味深い動画を作っています。本当は地味じゃないってことなのかもしれません。真面目なチャンネルなので特に言うこともないんですが、直近のブラックアウトとブラックスタート(要するに電力網のブートストラップ問題)を扱った2本の動画は大変良かったですね。ぜひこの調子で続けていただきたいところ。
How Long Would Society Last During a Total Grid Collapse? - YouTube
What Is A Black Start Of The Power Grid? - YouTube
私の趣味
疲れてきたので短めにいきます。
・ミリタリー
・Eastory
4本に渡り計40分以上かけて独ソ戦の前線推移を解説するシリーズで度肝を抜かれました。最近はちょっと微妙な感じになりつつあり悲しい。
Eastern Front Animated - YouTube
・Military History Visualized
ちゃんと題材を研究されているし、投稿頻度も安定性もいいです。戦車の話が多いがちなのはやっぱり中の人がドイツ人だからなんでしょうか。
・Montemayor
3本に渡り計1時間半かけてミッドウェイ海戦の解説をしたシリーズで度肝を抜かれましたが、まじで投稿頻度が低いです。年に一本、ただし長さは一時間、みたいなチャンネル。
・ゲームとか
・Game Maker's Toolkit
ゲームデザイン分析界隈(なにそれ)では超大物です。
・Mental Checkpoint
現れるやいなや Game Maker's Toolkit の王座に挑戦してきたチャンネル、というイメージ。更新頻度がネックです(というか長らく新着見てないな)。たしか中の人はルーマニア出身ですね。
・Errant Signal
めちゃくちゃ優秀な批評家なんですけど、特に2012年にフォトリアリズムの限界を見抜いたこの動画の衝撃は強いんじゃないでしょうか。YouTube メタゲームについていけずに頭を打った偉大な古参勢の典型例です。悲しいね。
Errant Signal - Photorealism - YouTube
・Ygg Studio
www.youtube.comおそらくはこちらも頭を打った古参勢。アニメ批評をやっていました(本格的な活動からは最近引退してしまった)。
かなり辛口ですが、思想が私に近いのでけらけら笑いながら見ていがちです。アニメを見る目の鋭さはこの動画からよく分かると思います。いわく切るべきアニメは1話で分かると。
How to Recognize a Terrible Anime (in just one episode) - YouTube
あとがき
およそ1万5千字らしいです。なに?これ。うまく他のチャンネルと混ざらないなと思って切ったのもそれなりにありますよ。あとは本当に個人的すぎる趣味は当然ここに含まれてないわけですし......。チャンネル単位ではそうでもないけど数本だけ好きな動画がある、みたいな例も少なくないですし。いつか単発の好きな動画もまとめたいですね。
いや、まとめたくはないわ。まとめたいわけない。文章を書くのも溶かした人生と向き合うのも疲れました。1万5千字まじで言ってる......?いや......
みなさんはこんな記事が書けるくらい YouTube に時間を溶かすのではなく、同じ時間をまんがタイムきららを読んだりきららアニメを見たりまんがタイムきららの評論や二次創作を出力するのに使いましょう。こうなってはいけません......